山尾 悠子|やまお ゆうこ|1955年3月25日 - は、日本の小説家、幻想文学作家、歌人。日本文藝家協会会員。岡山県岡山市出身。
澁澤龍彦経由でシュールレアリスム系の芸術に強い影響を受けている。クールかつ詩的な文体で幻想的な別世界を創造し、惜しげもなくそれを崩壊させるというパターンを繰り返し、カタストロフに満ちた残酷で美しい作品を執筆した。寡作で知られ、1985年以降作品の発表が一時途絶したが、1999年に執筆を再開している。
幼少期にC・S・ルイスの子ども向けファンタジー『ナルニア国物語』シリーズ最終巻『さいごの戦い』を読み、「敵も味方ももろともに暗い世界へと崩壊していくイメージ」に大きな衝撃を受ける(山尾は『ナルニア国物語』は別だが、ファンタジー読者ではないと述べている)。
地元の同級生に金原瑞人(ヤングアダルト評論・英米文学翻訳者)がいる。岡山県立岡山操山高等学校に進学。高校までは泉鏡花、谷崎潤一郎、岡本かの子などの全集を読んだ。
同志社大学文学部国文科。「黒と緑で装丁された箱も内容も衝撃的だった。シュールレアリスムの画家デルボーら何もかも教えられた」という。塚本邦雄は、貧乏学生時代に食費を削って次々刊行される豪華本新刊を購入するほど熱烈なファンだった。詩人の高橋睦郎の影響も受ける。専攻は谷崎潤一郎と泉鏡花で迷い、鉛筆を倒して鏡花に決めた。大学在学中の1973年に「仮面舞踏会」を『S-Fマガジン』(早川書房)のSF三大コンテスト小説部門(のちのハヤカワ・SFコンテスト)に応募して選外優秀作に選ばれ、1975年11月号の「女流作家特集」で掲載され20歳でデビューした。
その後、山陽放送に勤務しテレビ制作部で美術を担当するかたわら、『S-Fマガジン』、『奇想天外』(奇想天外社)、『SFアドベンチャー』(徳間書店)、『小説ジュニア』(集英社)などの雑誌に 作品を発表。
日本SF作家クラブのメンバーとして小松左京、星新一、筒井康隆、手塚治虫、永井豪らに刺激を受け、小松から「みずみずしく、深みのあるSF感覚」と高く評価された。なお、2020年9月時点で、日本SF作家クラブの会員一覧に山尾の名前はない。
山尾作品はSFよりむしろ伝統的な幻想小説といった趣であったが、作家の野阿梓いわく、当時の文学には山尾のような作品を受け入れる媒体はなかったようである。1979年に退職して執筆に専念し、1980年には書き下ろしの長編第1作『仮面物語』を上梓、若いころから短歌も作っており、1982年には唯一の歌集『角砂糖の日』を刊行、本人曰く十数年の沈黙期間は意図的なものではなく、結果的にそうなったのだという。
十数年の休止期間を経て、1999年に『幻想文学 第54号』(アトリエOCTA)に「アンヌンツィアツィオーネ」を発表して復活。インターネットの読書系サイトで熱烈な支持を集め、これが一つの原動力となり。2003年9月には2作目の書き下ろし長編『ラピスラズリ』を発表した。2004年には金原瑞人らと、ジェフリー・フォード(Jeffrey Ford)『白い果実』(''Physiognomy'')を翻訳している。
2018年発表の『飛ぶ孔雀』で第46回泉鏡花文学賞、第39回日本SF大賞、第69回芸術選奨文部科学大臣賞(文学部門)を受賞した。
2018年時点で、岡山県都窪郡に在住している。
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