かなに関連する小説ニュースまとめ
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かな ニュース検索結果
2021.8.10 【今週はこれを読め! SF編】江戸川乱歩をドストエフスキーへ還流する、文学的メビウスの環
巻頭に配された「アントンと清姫」、巻末を飾る書き下ろし作品「ドグラートフ・マグラノフスキー」。もうタイトルを見ただけでワクワクするではないか。文学とSFのセンスに優れた名手、高野史緒による超絶リミックス作品集である。全六篇を収録。
2021.8.3 【今週はこれを読め! エンタメ編】勇気づけられる連作短編集〜桂望実『終活の準備はお済みですか?』
実用本・フィクションを問わず、終活に関する本が多数出版されていることは、少し前から気になっていた。
2021.8.3 【今週はこれを読め! SF編】知性を発展させる蜘蛛たちと軌道上の狂える神
読み応えのある本格宇宙SF。現代的センスの物理・情報ガジェットと、よく考えられた生物・生態系学の設定が噛みあい、緊迫した局面がつぎつぎに移り変わる。上下巻合わせて七百ページを超える長尺だが、停滞するところがない。アーサー・C・クラーク賞を受賞した作品。
2021.7.30 【今週はこれを読め! ミステリー編】魅力的な主人公コンビが誕生!〜マイケル・ロボサム『天使と嘘』
また一組の魅力的な主人公コンビが誕生した。
2021.7.28 【今週はこれを読め! エンタメ編】望んで行動したヴィヴィアンの人生〜『女たちのニューヨーク』
若さだけを頼りに無鉄砲な日々を過ごしていた主人公が、大きな挫折を経験し、紆余曲折を経て真実の愛を見つける。こんな風に要約することが可能な物語が、いままでどれほどたくさん書かれてきただろう。しかし、「また若い女の成長小説か」と読む前から理解したような気持ちにならずに、どうか手に取ってみてほしい。決して簡単な一文でまとめられるような内容ではなかったと、読み終えたあなたは知るに違いないから。
2021.7.27 【今週はこれを読め! SF編】つぎつぎに立ちはだかる困難を超えて火星へ
別な時間線の1950年代を設定して、宇宙飛行士を目ざす女性たちの奮闘を描いた『宇宙へ』の続篇。
2021.7.26 作家の読書道 第231回:佐藤究さん
今年『テスカトリポカ』が山本周五郎賞と直木賞を受賞、注目を集める佐藤究さん。幼い頃はプロレスラーになりたかった福岡の少年が、なぜ本を読み始め、なぜ小説を書き始め、なぜ群像新人文学賞受賞後に江戸川乱歩賞で再デビューしたのか。そしてなぜ資本主義について考え続けているのか。直木賞発表前の6月、リモートでおうかがいしました。
2021.7.22 【今週はこれを読め! ミステリー編】ヴァランダー・シリーズ最後の書『手/ヴァランダーの世界』
――これはクルト・ヴァランダー・シリーズ最後の出版物である。このシリーズはこの本をもって終了する。
2021.7.21 【今週はこれを読め! エンタメ編】失恋の真相を解き明かす〜大石大『いつものBarで、失恋の謎解きを』
社会学とエンタメの融合という独特の境地を切り拓きつつある新鋭・大石大の長編第2作。本書では、主人公・大谷綾の過去の失恋の真相を解き明かしていく安楽椅子探偵ミステリー的な趣向が、最大の読みどころといえよう。
2021.7.20 【今週はこれを読め! SF編】夢の国を旅して"覚醒する世界"へと至る
原題はThe Dream-Quest of Vellitt Boe、物語がはじまる街の名はウルタールとくれば、ピンとくるひとも多かろう。この作品の霊感源はH・P・ラヴクラフトだ。
2021.7.13 【今週はこれを読め! ミステリー編】心を掴んで離さないエドワード・ケアリー短編集『飢渇の人』
エドワード・ケアリーの短篇集が出た。
2021.7.13 【今週はこれを読め! SF編】伊藤典夫が手ずから選んで訳した英米SFの名作八篇
伊藤典夫さんと言えば、日本にジャンルSFが定着しはじめた1960年代から英米のSF動向を紹介、新鮮な作品の翻訳を担ってきた第一人者。その伊藤さんがこれまで翻訳したなかから、とくに思いいれの深い作品を選りすぐったアンソロジーが本書である。
2021.7.7 【今週はこれを読め! エンタメ編】死の近くにいる主人公の心の変化〜八幡燈『いつかたどりつく空の下』
「湯灌」という言葉を知っているのは、確か祖母に教えてもらったからだと思う。その祖母は遠方で亡くなり、私は死に顔も見られなかった。私の父は職場で、母は家で亡くなったため、遺体はいったん警察に引き取られた。家に戻ってきたときには身を清められた後だったので、実際に湯灌というものが行われているところを目にしたことはない。
2021.6.25 【今週はこれを読め! ミステリー編】ユダヤ人古書店主の決死の犯罪捜査『狼たちの城』
この設定で話がつまらなくなるはずがないだろう。
2021.6.23 【今週はこれを読め! エンタメ編】過去にとらわれた男の旅〜遠田潤子『緑陰深きところ』
主人公の三宅紘二郎は、40年以上前に大阪・ミナミの外れで「河童亭」というカレー店を開いて、すでに70歳を過ぎた。
2021.6.22 【今週はこれを読め! SF編】血臭と瘴気が立ちこめる魔界西部
拳銃を携え無法の西部を旅する無頼の牧師ジュビダイア・メーサー。彼の行動原理は神への献身でも福音宣教でもなく、魔物たちの殲滅だ。ひたすら狩りまくる。
2021.6.18 【今週はこれを読め! ミステリー編】疾風怒濤のホラー西部劇『死人街道』
神を激しく憎みながらその憎悪の対象に祈りを捧げる以外の生き方を知らない男。
2021.6.16 【今週はこれを読め! エンタメ編】読後感さまざまの将棋短編小説集〜芦沢央『神の悪手』
近年将棋は安定した人気を保っているが、プロ棋士として活躍することがどれだけたいへんなことか理解している人は少ないだろう(と、偉そうに言えるほどには私自身も理解が足りていないのだが)。
2021.6.15 【今週はこれを読め! SF編】奇妙なタイムトラベル、石器時代の種族とともに生きる
1982年に発表、ネビュラ賞長篇部門を受賞したマイクル・ビショップの代表作。
2021.6.10 【今週はこれを読め! ミステリー編】ブロック編のアート・アンソロジー『短編回廊』
美しき罠、あるいは牢獄の展覧会と言うべきか。
2021.6.9 【今週はこれを読め! エンタメ編】緊急事態宣言下の1日1編『Day to Day』
昨年緊急事態宣言が出たとき、いままでに経験したことのない状況に対しての不安や緊張感があった。非日常な空気に押しつぶされそうになり「本を読む気になれなくなった」という声をあげる方々も、かなりの数いらしたと記憶している。幸い私は文学作品に頼って過ごしており、昨年の春は1日1編の短い小説やエッセイに元気づけられる日々でもあった。リアルタイムで読んだ方も読めなかった方も、この機会にぜひ手に取られることをおすすめする。あの心細かった毎日をなんとかして乗り切ろうとしていた自分たちの必死さが、少しでも報われるような気がするから。
2021.6.8 田辺聖子さんの学生時代の日記見つかる 終戦の日の心境克明に
人生の機微を軽妙に語る小説やエッセーなどを数多く残し、おととし91歳で亡くなった作家の田辺聖子さんが、終戦の日を迎えた心境などを克明につづった学生時代の日記が見つかりました。「軍国少女」の一面がうかがえる一方で、戦争に振り回される境遇に対する率直な思いも記されています。
2021.6.8 【今週はこれを読め! SF編】冷徹なる種族殲滅の宇宙で、愛は価値を持つか?
世界的ベストセラー《三体》シリーズの完結篇。『三体』『三体II』と比べて、時空スケールがいっそう壮大になっている。
2021.6.5 朔太郎がスペイン風邪!? 感染知らせる 直筆書簡見つかる 前橋文学館で近く公開
前橋市出身の詩人萩原朔太郎(1886〜1942年)が、約100年前に世界的に大流行した「スペイン風邪」に感染していたとみられる内容を記した直筆書簡が見つかった。
2021.6.2 【今週はこれを読め! エンタメ編】残酷さと優しさが共存する短編集〜一穂ミチ『スモールワールズ』
読み終えて、人間って残酷で勝手だなと思った。だけど、その残酷さや勝手さは、優しさや思いやりみたいなものと共存し得るんだとも思った。
2021.6.1 【今週はこれを読め! SF編】マイリンク、シェーアバルト、ブラックウッド......夢幻の境地に踏みいる
『幻想と怪奇』は雑誌の体裁だが書店の扱いは書籍だ。毎号、特集形式を取っているので、実質的にアンソロジーといってよい。こんかいはドイツ幻想小説の紹介者として名高い種村季弘さんの未発表翻訳が発見され、それをきっかけに企画が練られたそうだ。
2021.6.1 【今週はこれを読め! ミステリー編】台湾ミステリーの最高傑作『台北プライベートアイ』
これまで翻訳された台湾ミステリーの最高傑作ではないかと思う。
2021.5.28 作家の読書道 第229回:蛭田亜紗子さん
2008年に第7回「女による女のためのR‐18文学賞」大賞を受賞、10年に『自縄自縛の私』(受賞作「自縄自縛の二乗」を改題)を刊行してデビューした蛭田亜紗子さん。現代人の日常を描く一方で、『凜』では大正期、開拓時代の北海道を舞台に過酷な環境を生きる男女を描き、最新作『共謀小説家』では明治期に小説執筆にのめりこんだある夫婦の話を描くなど、幅広い作風で活躍中。では蛭田さんが親しんできた作品とは? リモートでたっぷりおうかがいしました。
2021.5.27 【今週はこれを読め! ミステリー編】小心者バルバロッティ警部補が気になる!『殺人者の手記』
ホーカン・ネッセルきたきた。
2021.5.26 【今週はこれを読め! エンタメ編】おもちさん83歳の日々〜朝倉かすみ『にぎやかな落日』
私があと30年生き長らえることができれば、主人公のおもちさんと同年代になる。
2021.5.21 【今週はこれを読め! ミステリー編】九歳の少年が出会う苛酷な世界『ブート・バザールの少年探偵』
少年が出会った世界には光が降りそそいでいたか。それとも。
2021.5.20 【今週はこれを読め! エンタメ編】とびきりの「時間」を目指す〜古内一絵『最高のアフタヌーンティーの作り方』
本書の舞台は、都心に広大な敷地を有する桜山ホテル。うふふ~このティールームにねえ、行ったことあるんですよ。桜山ホテルは架空の場所ですから、モデルになった東京・目白の椿山荘にってことなんですけど。残念ながら庭園内で多数目にすることのできる桜は見頃を過ぎてしまっていた時期でしたが、いただいたのはまさに桜アフタヌーンティー。気の合う友人たちとの楽しい時間、窓から見える都会の真ん中とは思えない美しい眺め、そして一口ごとに至福の瞬間が訪れるおいしいスイーツやセイボリー(サンドイッチなどの食事)の数々。もう、天国かと思いましたね(家計には大きく響きましたけど)。
2021.5.19 【今週はこれを読め! SF編】登場人物たちが暮らす秘密の図書館、書き換えられる初版本
犯罪小説、ホラー、ファンタジイと幅広く活躍するジョン・コナリーの短篇集。大部な原書Night Music: Nocturnes Volume 2から、書物や物語を題材とした四篇を選んでの邦訳だ。
2021.5.12 【今週はこれを読め! エンタメ編】お針子少女の成長物語〜ビアンカ・ピッツォルノ『ミシンの見る夢』
『ミシンの見る夢』は、イタリアの児童文学の第一人者であるビアンカ・ピッツォルノによる一般小説。
2021.5.6 【今週はこれを読め! SF編】ゴールドラッシュの小惑星で繰りひろげられるアクションSF
ロバート・シルヴァーバーグ『小惑星ハイジャック』(創元SF文庫)
2021.5.6 【今週はこれを読め! ミステリー編】7つの作中作が登場する曲者小説『第八の探偵』
何をしてくるかわからない曲者はミステリーの世界では大歓迎なのだ。
2021.4.27 【今週はこれを読め! ミステリー編】世にも美しい犯罪小説『父を撃った12の銃弾』
世にも美しい犯罪小説である。
2021.4.23 作家の読書道 第228回:阿津川辰海さん
大学在学中に『名探偵は嘘をつかない』でデビュー、緻密な構成、大胆なトリックのミステリで注目を浴びる阿津川辰海さん。さまざまな読み口で読者を楽しませ、孤立した館で連続殺人事件に高校生が挑む新作『蒼海館の殺人』も話題。そんな阿津川さん、実は筋金入りの読書家。その怒涛の読書生活の一部をリモートインタビューで教えていただきました。
2021.4.22 【今週はこれを読め! エンタメ編】成長していく少年の物語〜トレント・ダルトン『少年は世界をのみこむ』
本書の帯には「2019年オーストラリアで一番売れた小説」とあるが、そこから考えられるのはオーストラリア国民は相当に骨のある人々だということだ。
2021.4.20 【今週はこれを読め! SF編】そこにあるだけの奇跡、手を伸ばしつづける希望
エリザベス・ハンド『過ぎにし夏、マーズ・ヒルで』(東京創元社《創元海外SF叢書》)
2021.4.13 【今週はこれを読め! SF編】霊能者連続失踪事件を追うヴィクトリアン・ミステリ。
リサ・タトル『夢遊病者と消えた霊能者の奇妙な事件』(新紀元社)
2021.4.7 【今週はこれを読め! エンタメ編】過去から続く因縁と秘密〜遠田潤子『紅蓮の雪』
つらくなるのはわかっているのに手に取ってしまう、それが遠田潤子の小説だ。本書は、主人公・伊吹の双子の姉である朱里の葬儀のシーンから幕を開ける。朱里は「伊吹、ごめん」とだけ書かれた書き置きを残して、町外れにある城の石垣から飛び降りたのだった。伊豆の老舗旅館の跡取り息子である大学の先輩との婚約も整い、幸せそうに見えたのに。両親からの愛情を与えられずに育った姉弟として、お互いを一生守ると約束したのに。
2021.4.6 【今週はこれを読め! SF編】全銀河に反逆した種族「人類」、その最後の生き残りが主人公
ザック・ジョーダン『最終人類』(ハヤカワ文庫SF)
2021.3.31 【今週はこれを読め! エンタメ編】女たちの喪失と希望の物語〜ジュリア・フィリップス『消失の惑星』
幼い姉妹が八月の午後を過ごしている海辺の描写に、まずやられる。どちらかというと風景の描き方といったものに注意を払わない無粋な人間がそういう部分に目を留めるとき、その小説は傑作だと思って間違いない。母から妹の面倒をみるようにとの指示に倦んでいる姉と、年齢のわりには無邪気な妹。そして、足を怪我したと語る男。読者の胸にゆっくりと不穏さが忍び込んでくる。「行ってはだめだ、行くな」という我々の焦りは、彼女たちに届かない。
2021.3.27 作家の読書道 第227回:尾崎世界観さん
2001年にロックバンドのクリープハイプを結成、12年にメジャーデビュー。ヴォーカル、ギター、作詞作曲で活躍する一方、16年に小説『祐介』を発表した尾崎世界観さん。最新作『母影』が芥川賞にノミネートされるなど注目を浴びる尾崎さんは、どんな本を求めてきたのか。歌うこと、書くことについて切実な思いが伝わってくるお話です。リモートでインタビューを行いました。
2021.3.24 【今週はこれを読め! エンタメ編】1963年へのタイムスリップ小説〜阿川佐和子『ばあさんは15歳』
阿川佐和子さまは素敵だ。
2021.3.23 装丁家の平野甲賀さん死去 「深夜特急」の題字手がける
平野 甲賀さん(ひらの・こうが=装丁家)22日、肺炎で死去、82歳。葬儀は親族で行った。喪主は妻公子(きみこ)さん。
2021.3.23 【今週はこれを読め! SF編】超スケールの宇宙SFから、歴史認識を扱った議論喚起的な作品まで
ケン・リュウ『宇宙の春』(早川書房《新☆ハヤカワ・SFシリーズ》)
2021.3.17 【今週はこれを読め! エンタメ編】重厚かつトリッキーな丸山正樹『ワンダフル・ライフ』
今回ご紹介する本は、【エンタメ編】という枠で取り上げるには少々ハードな内容かもしれない。気難しい障害者の妻と介護に疲れた夫の息が詰まるような生活ぶりを、読者は冒頭からさっそく読むことになる。
2021.3.16 【今週はこれを読め! SF編】甲冑から高度AIまで、さまざまなパワードスーツのアンソロジー
J・J・アダムズ編『この地獄の片隅に パワードスーツSF傑作選』(創元SF文庫)
2021.3.15 第12回〈小説 野性時代 新人賞〉 選考結果のお知らせ
本日3月15日(月)午後3時より、第12回〈小説 野性時代 新人賞〉(主催=株式会社KADOKAWA)の選考会が行われました。
2021.3.10 【今週はこれを読め! エンタメ編】仕事への価値観をビシビシ問う連作短編集~額賀澪『転職の魔王様』
私(1967年生まれ)くらいの年代だと、転職にあまり明るいイメージがない人も多いだろう。長男の友だちが大手企業を退職したと聞いたとき、「え~、もったいないね」と言った私に、長男は「いや、そうは言っても自分に合わない会社に勤め続けるよりいいでしょ」と返してきた。その発言に対して、私は「それはそうだけど、もったいないことはもったいないよな」と心の中でつぶやいたのだった。
2021.3.9 【今週はこれを読め! SF編】埋もれていた傑作を含む、新編集の眉村卓ショートショート集。
眉村卓『静かな終末』(竹書房文庫)
2021.3.3 【今週はこれを読め! エンタメ編】豪華ショートショート集『超短編! 大どんでん返し』
チョコレートのアソートボックスとかたくさんのネタが並んだお寿司桶とか、いろいろな種類が揃ったものってうれしいですよね。本書はまさにそんな本。アンソロジーといっても30人もの作家の作品が1冊で読める本って、なかなかないと思います。そんな夢のような企画が可能になったのは、掲載作品がほぼ4ページという「超短編」だから。
2021.3.2 探偵小説家の小栗虫太郎 作家像の見直しも 家庭小説を確認
昭和初期に活躍した探偵小説家で「黒死館殺人事件」などの作品で知られる小栗虫太郎が、昭和16年にほかの作品とは作風が全く異なる家庭小説を発表していたことが確認されました。
2021.3.1 【今週はこれを読め! ミステリー編】死と生が表裏一体の短篇集『丸い地球のどこかの曲がり角で』
滅びの唄が聴こえる。
2021.2.27 作家の読書道 第226回:酉島伝法さん
2011年に「皆勤の徒」で第2回創元SF短編賞を受賞、造語を駆使した文章と自筆のイラストで作り上げた異形の世界観で読者を圧倒した酉島伝法さん。2013年に作品集『皆勤の徒』、2019年に第一長編『宿借りの星』で日本SF大賞を受賞した酉島さんは、もともとイラストレーター&デザイナー。幼い頃からの読書生活、そして小説を書き始めたきっかけとは? リモートでお話をおうかがいしました。
2021.2.26 「魔法のiらんど 小説&コミック大賞」小説大賞・コミックシナリオ大賞の受賞作品が決定!
[株式会社KADOKAWA]
2021.2.24 【今週はこれを読め! エンタメ編】かけがえのない日常を描く短編集〜奥田英朗『コロナと潜水服』
奥田英朗さんの小説を読むとたいてい心に浮かんでくるのは、「身につまされる」という言葉だ。奥田作品と一口にいっても読み心地は幅広くて、『最悪』(講談社文庫)のようなエッジの効いたものももちろんすごいのだが、個人的には『家日和』(集英社文庫)などのそんなに大きな事件は起こらないけれどもかけがえのない日常が描かれた小説が好きだ。そして、『コロナと潜水服』もそういった作品5編が集められた短編集である。
2021.2.24 【今週はこれを読め! SF編】現実と記憶の不調和、組織がはらむ不条理を描く十二篇
岡本俊弥『千の夢』(オンデマンド)
2021.2.19 小川未明文学賞 大賞は愛知県 かみやとしこさん(68)の作品
第29回小川未明文学賞の大賞に、去年、優秀賞を受賞した、愛知県在住のかみやとしこさん(68)の作品が選ばれました。
2021.2.19 【今週はこれを読め! ミステリー編】フィルム・ノワールのような警察小説『刑事失格』
一言で表すなら、フィルム・ノワールの気配をまとった警察小説である。
2021.2.18 【今週はこれを読め! エンタメ編】さまざまに変わっていく家族の物語〜窪美澄『ははのれんあい』
「母の恋愛」というものが描かれた作品なのかな、と思いながら読んだけれど(もちろんそこにも触れられるのだけれど)、何よりも家族というものについての小説だった。家族に恵まれている人も残念ながらそうでない人も、すべての人が読むべき作品だと思った。
2021.2.17 【今週はこれを読め! SF編】夏への扉はなくても、猫がいればあたたかい
芝村裕吏『統計外事態』(ハヤカワ文庫JA)
2021.2.12 【今週はこれを読め! ミステリー編】とんでもなく無能で不愉快な警部のコメディ『平凡すぎる犠牲者』
ドーヴァー警部よ(ピンクレディーの某曲っぽく)。
2021.2.9 【今週はこれを読め! SF編】独自のセンスで選んだ七篇、中国とアメリカの状況を照らしあう
柴田元幸・小島敬太編『中国・アメリカ 謎SF』(白水社)
2021.2.5 【今週はこれを読め! ミステリー編】人種問題を根底にすえたスリラー『白が5なら黒は3』
憎悪の再生産に関する物語だ。
2021.2.3 【今週はこれを読め! エンタメ編】新幹線の開発に込められた思い〜まはら三桃『零から0へ』
かつて日本は戦争をしていた。そのために命を落としたのは老若男女問わずであったが、中でも多くの若い人々が主戦力として戦地に送られた。数え切れないほどの若者たちが落命し、未来を断たれた。人々の暮らしをよりよくするはずの技術の進歩は、戦没者の数を増やす要因にもなり得た。戦争は、残された家族のみならず、戦闘機の設計などを手がけた技術者たちの心にも深い傷を負わせた。
2021.2.2 【今週はこれを読め! SF編】AIの本質と人間の情動
郝景芳『人之彼岸』(早川書房《新☆ハヤカワ・SFシリーズ》)
2021.2.1 第72回読売文学賞…受賞6氏と作品
第72回読売文学賞(令和2年度)が決まりました。選考委員の選評を紹介します。
2021.1.28 【今週はこれを読め! ミステリー編】ウイルス蔓延下、封鎖都市の殺人事件『ロックダウン』
ウイルス蔓延下、厳戒態勢の都市で刑事はどう動くのか。
2021.1.27 【今週はこれを読め! エンタメ編】女子高生バンド3人組の20年後の物語〜角田光代『銀の夜』
本書における主要人物は3人の女性。彼女たちが出会ったのは、幼稚園から短大までの一貫教育の女子校。ちづるは小学校から、麻友美は中学校から入学し、伊都子は中2のときの転入組だった。中3で同じクラスになった3人は、アマチュアバンドコンテストに出場する。急ごしらえのバンドの実力は圧倒的に不足していたものの、丈を短くした制服のスカートで歌う最年少出場者として注目された。タレント事務所から声がかかり、彼女たちのバンド「ひなぎく」は「ディズィ」としてデビューすることに。
2021.1.21 【今週はこれを読め! エンタメ編】義肢装具士への道〜山本幸久『神様には負けられない』
『神様には負けられない』の主人公は、渋谷医療福祉専門学校(通称シブイク)の2年生である二階堂さえ子。義肢装具士を目指している。
2021.1.20 【今週はこれを読め! ミステリー編】「いーっ」となるミステリー『マイ・シスター、シリアルキラー』
いーっとなる小説。
2021.1.20 芥川賞は宇佐見りんさん・直木賞は西條奈加さん
芥川賞と直木賞の選考会が開かれ、芥川賞に宇佐見りんさんの「推し、燃ゆ」が、直木賞に西條奈加さんの「心淋し川」(うらさびしがわ)が、それぞれ選ばれました。
2021.1.19 【今週はこれを読め! SF編】羊羹を食べながら日本海軍を翻弄するオリオン太郎
林譲治『大日本帝国の銀河1』(ハヤカワ文庫JA)
2021.1.18 向田邦子さんの肉声テープ発見 死の半年前、小説観語る
作家の向田邦子さん(1929~81)が自身の小説観を語っている様子を収録したカセットテープが、新潮社内でみつかった。飛行機事故で亡くなる半年前に開かれた読書会で、講師として招かれた向田さんは「文学賞(直木賞)を間違ってもらってしまった」と謙遜しながらも、自分の作品のスタイルを確立させることに意欲を見せている。
2021.1.13 【今週はこれを読め! エンタメ編】恐るべき筆力とユーモアが光る鈴木るりか『私を月に連れてって』
恐ろしい子! と私の内なる月影先生が発動してしまうくらい驚かされたのが、現役高校生作家・鈴木るりかさんの『私を月に連れてって』である。前作『太陽はひとりぼっち』でも十分すぎるほどの衝撃だったが、今回はさらに記録更新だ。もうほんと、私のように鈴木さんの倍以上歳をとっている人だって(いや、サバを読んだがほぼ3倍です)、こんなにおもしろい本を書ける人材などどれだけいることか。
2021.1.13 作家の半藤一利さん死去 90歳
昭和史の研究で知られ、戦争などをテーマに数多くのノンフィクション作品を発表してきた、作家の半藤一利さんが亡くなりました。90歳でした。
2021.1.11 【今週はこれを読め! SF編】特殊な閉鎖環境のなか、「剃刀の刃のように細い線」をたどる叛乱
ピーター・ワッツ『6600万年の革命』(創元SF文庫)
2021.1.6 【今週はこれを読め! エンタメ編】地球滅亡までの1ヶ月の物語〜凪良ゆう『滅びの前のシャングリラ』
"地球の滅亡まであと○○"という物語に外れはない。ぱっと思いつく限りでは、『ひとめあなたに...』(新井素子/創元SF文庫)も『終末のフール』(伊坂幸太郎/集英社文庫)もそうだ。そして、新たにこの系譜に連なるのが本書。
2021.1.5 【今週はこれを読め! SF編】多様な傾向を集めつつ、懐かしい印象すら受ける間口の広いアンソロジー
もっとも新しい十年紀のSF傑作選。思わず身がまえてしまうが、心配はご無用。収録されている作家の人種・経歴・セクシャリティは多様で、作品の傾向もバラエティに富んでいるものの、飛びぬけて先鋭的な表現・主題・論理はほとんどない。ある程度SFに馴染んでいる読者にとっては、むしろ懐かしい印象すら受けるくらいだ。
2021.1.3 日本SFを海外に積極展開へ 自身も初の小説を発表 日本SF作家クラブ会長・池澤春菜さん
「SFの振興と発展」をテーマに
2021.1.1 第55回北日本文学賞受賞者インタビュー
宮本輝氏選「第55回北日本文学賞」(副賞100万円)は、大阪市の大学院生、谷町蛞蝓(なめくじ)さん(32)の「きぼう」に決まった。
2020.12.29 【今週はこれを読め! ミステリー編】私立探偵スカダーの長い歩み『石を放つとき』
私立探偵小説のすべてがここに詰まっている。
2020.12.26 作家の読書道 第224回:伊与原新さん
2019年に『月まで三キロ』で新田次郎文学賞、静岡書店大賞、未来屋小説大賞を受賞した伊与原新さん。地球惑星科学を専攻して研究者になった伊与原さんが読んできた本とは、ある日小説を書きはじめたきっかけとは。エンタメから分かりやすい理系の本まで、幅広い読書遍歴を語ってくださいました。
2020.12.23 【今週はこれを読め! ミステリー編】満身創痍の探偵ハリー・ホーレを読むべし!
満身創痍という四文字がこれほど似合う男はいない。
2020.12.23 【今週はこれを読め! エンタメ編】部活をめぐる青春ミステリー連作集〜酒井田寛太郎『放課後の嘘つきたち』
「この人に会ってみたい」と思う人はたくさんいる。
2020.12.18 第164回「芥川賞・直木賞」、候補作決まる
日本文学振興会は12月18日、第164回「芥川賞」と「直木賞」の候補作を発表した。来年1月20日に東京・中央区の新喜楽で選考会を開き、同日受賞者の記者会見を開く。候補作は次の通り。
2020.12.16 【今週はこれを読め! エンタメ編】5人の「白野真澄」の短編集〜奥田亜希子『白野真澄はしょうがない』
たまーにエゴサーチというものをしてみることがある。とはいえ、私のような零細ライターではだいぶ下方にスクロールしていってようやく関連記事を見つけることができる程度だし、Twitterも炎上するほど閲覧されてもいないので気楽なものだ。常に検索上位にあがってこられる「松井ゆかり」さんは、タレントさんや格闘技の選手の方など。名前が同じというだけの他人ではあるが多少なりともご縁があるように思われて、画像などをじっと見つめてしまうことがある(もはやエゴサーチではない)。
2020.12.15 【今週はこれを読め! SF編】現実認識のテーマから、目くるめく神怪小説へ発展
第八回ハヤカワSFコンテスト優秀賞受賞作(前回紹介した竹田人造『人工知能で10億ゲットする完全犯罪マニュアル』と同時受賞)。
2020.12.9 【今週はこれを読め! エンタメ編】それぞれ味わいの異なるイヤミス短編集〜芦沢央『汚れた手をそこで拭かない』
ちょっと、みなさんご存じかしら? 独立短編集ってなかなか売れないんですって。
2020.12.8 【今週はこれを読め! SF編】高性能AIに挑む、落ちこぼれエンジニアとおかしなヤクザ
第八回ハヤカワSFコンテスト優秀賞受賞作。AI技術にかかわるアイデア満載の軽快エンターテインメントだ。とにかくセンスが抜群に良い。
2020.12.2 【今週はこれを読め! エンタメ編】令和、江戸、平安を生きるヒロインの恋〜川上弘美『三度目の恋』
男女間の心の機微がよくわからない人間としては、恋愛というものをメインに据えた小説というものはほとんど求めていないのだった。それでもたまに「読んでみようかな」と心が動くとしたら、少々変化球なものに対して。川上弘美さんの作品は、私が手放しで読書欲をかき立てられる数少ない恋愛小説だ。男女の触れ合いを端正に描いた恋愛ものであることは間違いないのだけれど、川上作品には読む者の想像を超えるひねりのようなものがあると思うから。
2020.12.1 【今週はこれを読め! SF編】21世紀最初の十年紀を飾った注目のSF短篇を収めたアンソロジー
待望の2000年代傑作選である。十年ごとに区切ってのSF傑作選(英語で発表された作品を対象としたもの)は、中村融・山岸真編『20世紀SF』1~6(1940年代から90年代)、小川隆・山岸真編『80年代SF傑作選』、山岸真編『90年代SF傑作選』があり、本書はそれらを踏まえての企画である。
2020.11.28 「作家になるとは思わなかった」三浦しをんさん流「小説の書き方」
熱い友情、悲しい恋愛、夢あふれる冒険――。心揺さぶられる小説に出合ったとき、自分も物語を書きたいと思ったことはないだろうか。
2020.11.28 作家の読書道 第223回:中山七里さん
今年作家デビュー10周年を迎えた中山七里さん。話題作を次々と世に送り出すエンターテインナーの読書遍歴とは? 大変な読書量のその一部をご紹介するとともに、10代の頃に創作を始めたもののその後20年間書かなかった理由やデビューの経緯などのお話も。とにかく、その記憶力の良さと生活&執筆スタイルにも驚かされます。
2020.11.25 【今週はこれを読め! エンタメ編】お誕生会をめぐる短編集〜古内一絵『お誕生会クロニクル』
何歳になっても誕生日はうれしい。それはその通りとして、私はずっと8月下旬の自分の誕生日が好きではなかった。①夏が苦手②夏休みの宿題が終わっていないと焦り始める時期なので、心から楽しめない③8月には原爆の日や終戦の日などがあるので、大っぴらに喜ぶのはためらわれる...といった感じ。誕生会そのものの思い出としては、幼稚園で催された会が7・8月合同だったうえに、おやつがぶどう(デラウエア)一房だけだったことも心のしこりとなっている(他の月はカップケーキとかクッキーとかチョコレートとかだった)。
2020.11.24 【今週はこれを読め! SF編】ハイテク汚濁都市にあらわれた神話的存在感を放つ女
作者サム・J・ミラーは2000年代に作家活動をはじめているが、本格始動は2012年。翌13年にシャーリイ・ジャクスン賞短篇部門を受賞、それ以降、いくつもの賞の候補になり、年刊傑作選収録の常連となっている。本書は2018年刊行の第二長篇で、ジョン・W・キャンベル・ジュニア記念賞を受賞した。
2020.11.19 「全米図書賞」の翻訳文学部門に柳美里さんの小説
アメリカで最も権威のある文学賞「全米図書賞」の翻訳文学部門に、柳美里さんの小説「JR上野駅公園口」が選ばれました。
2020.11.18 【今週はこれを読め! エンタメ編】絵にすべてを懸けた絵師の姿〜谷津矢車『絵ことば又兵衛』
みんなちがって、みんないい。金子みすゞが命を削るようにして紡いだ言葉は、いまだ人々の心を完全に改めさせるには至っていない。まして、個性や多様性といったものが共通認識とされていなかった時代には、他者の身体面や行動面における特徴をあげつらうのにいま以上に躊躇がなかったのではないだろうか。
2020.11.17 【今週はこれを読め! SF編】銀河英雄伝説トリビュート・アンソロジー
もはや『銀河英雄伝説』は古典である。SFの基礎教養というレベルさえ超え、ミームとして浸透・機能している。本書は、『銀英伝』の設定を活かして、六人の作家がオリジナル・エピソードを繰り広げる競作アンソロジーだ。
2020.11.11 【今週はこれを読め! エンタメ編】ぐっちゃぐちゃなところがいい!〜中島たい子『かきあげ家族』
この本、映画好きのみなさんはお読みになった方がいいです。次々にいろんな映画のタイトルや俳優・監督の名前が出てきて、しかもそれらが絶妙な使われ方をしてるんですよ。例えば、「若くはない引きこもりの息子を久しぶりに観て、八郎は自分は『2001年宇宙の旅』のボーマン船長のように、ワンシーンで一気に老け込んだ気持ちになるのだった」といった感じで。
2020.11.10 【今週はこれを読め! SF編】Anarchy in Osaka
物語の幕が開くのは1969年。
2020.11.5 <岬のマヨイガ>柏葉幸子の小説が劇場版アニメ化 吉田玲子脚本 david production製作 2021年公開
2016年に野間児童文芸賞を受賞した柏葉幸子さんの小説「岬のマヨイガ」(講談社)が、アニメ化され、劇場版アニメとして2021年に公開されることが分かった。岩手県の古民家を舞台に居場所を失った17歳の少女と住人たちの共同生活が描かれる。「のんのんびより」などの川面真也さんが監督を務め、「若おかみは小学生!」などの吉田玲子さんが脚本を手掛ける。「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズなどのdavid productionが製作する。
2020.11.3 【今週はこれを読め! SF編】怪奇小説の伝統に棹さす、みごとな表現の四作品
作者クックはイギリスの作家。ミステリおよび怪奇小説・映画の研究家でもあり、関連の学術著作がある。フィクションは、2017年に出版された本書が最初の単行本だ。四つの作品を収録する短篇集で、表題作「図書室の怪」が原稿用紙換算で300枚を超える中篇、のこり三篇は30~70枚弱の短篇という構成である。
2020.10.29 濱口竜介が村上春樹の短編小説「ドライブ・マイ・カー」を長編映画化
「ハッピーアワー」「寝ても覚めても」の濱口竜介が、村上春樹の短編小説「ドライブ・マイ・カー」を長編映画化することが決定した。
2020.10.27 【今週はこれを読め! SF編】アルゴリズムの支配を逃れ、なお生き延びるすべ
2068年、グーグル(をはじめとするデジタルの覇者である巨大企業)が世界を掌握していた。日常に浸透したネットワークにより、市民のあらゆる情報は集積され、徹底した――しかし体感的にはマイルドな――常時監視社会が完成している。私たちの行為や嗜好はすべてグーグルに筒抜けだ。それが「透明性」というタイトルの意味だ。
2020.10.24 作家の読書道 第222回:武田綾乃さん
学生時代に作家デビュー、第2作「響け!ユーフォニアム」がいきなりアニメ化され人気シリーズとなった武田綾乃さん。さまざまな青春を時にキラキラと、時にヒリヒリと描く武田さんはどんな本を読み、どんな思いを抱いてきたのか。お話は読書についてだけでなく、好きなお笑い芸人や映像作品にまで広がって…。意外性に満ちたインタビューをお楽しみください!
2020.10.20 【今週はこれを読め! SF編】稀覯書や古文書をめぐる怪奇譚、黴の匂いと書架の陰翳
著者マンビーは1913年にロンドンで生まれ、ケンブリッジ大学卒業後、古書店やオークションカンパニー勤務を経て陸軍に編入、フランス戦線で捕虜になり、収容所で怪奇小説を書きはじめた経歴の持ち主。職業作家ではなく、趣味で創作に手を染めたわけだ。作品数は少なく、49年刊行の本書に収録された14篇がすべてのようだ。その後は、書誌学者として業績を重ねた。
2020.10.15 独占インタビュー「ラノベの素」 大森藤ノ先生『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』
独占インタビュー「ラノベの素」。今回は2020年10月15日にGA文庫より『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』第16巻が発売された大森藤ノ先生です。TVアニメ第3期も10月より放送開始となる中、原作小説は新たな展開を迎える新章に突入します。2013年の『ダンまち』シリーズ刊行から約7年。過去から現在までを振り返り、作品との向き合い方や物語の立ち位置、そして本編から紐解くベル・クラネルをはじめとしたキャラクター達の成長に関するお話など、様々にお話をお聞きしました。ファン必見の『ダンまち』の今を語ります!
2020.10.15 高樹のぶ子さん 鏡花賞 金沢市主催「小説伊勢物語 業平」
金沢市が主催する第四十八回泉鏡花文学賞の選考委員会が十四日、東京都内であり、高樹のぶ子さん(74)の「小説伊勢物語 業平(なりひら)」が選ばれた。高樹さんは「新たな冒険をした作品が評価された。日本の美をきちんと書かれた作家の賞をいただけてうれしい」と喜びを表現した。
2020.10.14 【今週はこれを読め! エンタメ編】ひたむきヒロインのお仕事小説~中澤日菜子『働く女子に明日は来る!』
『働く女子に明日は来る!』(中澤日菜子/小学館)
2020.10.13 【今週はこれを読め! SF編】物珍しさではなく、作品そのものの価値で語られるべき充実のアンソロジー
イスラエルSFのアンソロジー。原著はアメリカで2018年に刊行されたが、編者のふたりはイスラエル人だ。
2020.10.6 【今週はこれを読め! SF編】映像は武器たりえるか、レンズを通して語る女たちの年代記
書き下ろし長篇。ひとつの物語が順々に語られていくのではなく、いくつものエピソードが嵌めこまれている。エピソード間の連続性が明らかなものもあれば、断片的に挿入されるものもある。また、別のエピソードとつながるように思えるが、ずいぶん先まで読まないとその関係が見えてこないものもある。技巧的に設計されたモザイク小説というより、撮りためたドキュメンタリーフィルムのように未完成の部分を残しているかんじだ。整理しきらないからこそ伝わる迫真がある。
2020.9.26 作家の読書道 第221回:高山羽根子さん
この夏、『首里の里』で芥川賞を受賞した高山羽根子さん。これまでも一作ごとにファンを増やしてきた高山さん、多摩美術大学で日本画を専攻していたという経歴や、創元SF短編新人賞に佳作入選したことがデビューのきっかけであることも話題に。読んできた本のほか美術ほか影響を受けたものなど、高山さんの源泉について広くおうかがいします。
2020.9.24 【今週はこれを読め! ミステリー編】ますます快調ホロヴィッツの犯人当てミステリ『その裁きは死』
アンソニー・ホロヴィッツは期待を裏切らない。
2020.9.23 【今週はこれを読め! SF編】オリジナル・アンソロジー・シリーズの三冊目。七篇を収録。
オリジナル・アンソロジー・シリーズの三冊目。七篇を収録。
2020.9.16 【今週はこれを読め! エンタメ編】おもしろすぎる将棋ミステリー〜奥泉光『死神の棋譜』
おもしろすぎる。ミステリーでもあるし、ファンタジー的な要素もあるのだが、何よりもまず将棋というものを中心に描かれた作品であるというところが重要かなと思う。昨今の将棋人気の盛り上がりも手伝って、多くの作家が将棋を題材にした小説を発表する中、ガチのファンでいらっしゃるという奥泉さんも参戦されたのはうれしい限り。
2020.9.15 【今週はこれを読め! SF編】異質な敵の全容、失われた文明の謎、そして秘匿された人類史
林譲治による本格ハードSFシリーズがついに完結した。
2020.9.12 【今週はこれを読め! ミステリー編】耐え難いほどの孤独と向き合う『娘を呑んだ道』
夜の底を行く。
2020.9.9 【今週はこれを読め! エンタメ編】誰もが輝くバスケ小説〜藤岡陽子『跳べ、暁!』
バスケットボールって、ほんとうにハードなスポーツだというイメージがある。ほぼずーっと走りっぱなし、手も足も使う、ジャンプ力も要求される。未経験者からすると、こんなにいっぺんにいろんなことをしなければならないのが信じられない。しかも、チームワークまでが重要になってくるのだ。
2020.9.8 【今週はこれを読め! SF編】迷路を進むと〈薄暮〉が追いかけてくる。歴史も人生も。
映画化された超大作『クラウド・アトラス』で知られるデイヴィッド・ミッチェルが、2014年に発表した長篇。世界幻想文学大賞を受賞した。
2020.9.2 【今週はこれを読め! エンタメ編】個性がまぶしい女子寮小説『お庭番デイズ』が楽しい!
世界には不確定要素が多すぎる、とつくづく思う。
2020.9.1 【今週はこれを読め! SF編】1950年代の宇宙移住計画、宇宙飛行士を目ざす女性の奮闘
1950年代のアメリカ。性差別・人種差別が根強く残る時代に、宇宙飛行をめざす女性たちがいた。第二次大戦中に婦人操縦士隊のメンバーとして従軍したベテラン、あるいは地域の〈航空クラブ〉で空を飛ぶ醍醐味を覚えた者、さらに物語が進むと海外からの志願者も加わる。彼女たちは人種も社会的地位もキャリアも異なる。ただ「宇宙を飛びたい」という情熱は共通だ。
2020.8.31 【今週はこれを読め! ミステリー編】鼻つまみものの刑事の危険な小説『笑う死体』
探偵は信用できないが、謎解きのためには作者を信頼するしかない。
2020.8.26 【今週はこれを読め! エンタメ編】おいしいものが励ましてくれる物語〜冬森灯『縁結びカツサンド』
カツはおいしい。関東出身であることも関係するのか、個人的にはやはりカツは豚肉というイメージがある。村上春樹さんが"関西ではカツといえば牛肉"といった趣旨のエッセイを書いておられて、長らくビーフカツを食べることを熱望していたのだが(そして、実際に食べてみてとてもおいしかったのだが)、トンカツの方が汎用性があることには多くの方が賛成してくださるのではないだろうか(卵でとじる一般的なカツ丼などは、豚で作る方が合う気がするし)。そこでカツサンド。ビーフカツのサンドウィッチももちろん美味だけれど、本書で登場するのは豚肉を使ったものものだ。夏の青空に規則正しく並んだ縞模様の雲を見て、スペアリブを連想してみるのも楽しいと思う(本文ご参照のこと)。
2020.8.25 【今週はこれを読め! SF編】美をめぐる真正と倫理を、SFの設定とミステリの構成で描く
地球の衛星軌道上に建造された博物館天体〈アフロディーテ〉を舞台とするシリーズ三巻目。絵画・工芸・音楽・舞台・文芸・動物・植物などありとあらゆる美が網羅され、データベースに頭脳を直結させた学芸員が活躍している。
2020.8.24 【今週はこれを読め! ミステリー編】EQMMコンテストの全貌を見届ける『短編ミステリの二百年vol.3』
短篇ミステリーの黄金期はいつだったのか。
2020.8.19 【今週はこれを読め! エンタメ編】戦下でポン菓子製造機を作った人〜歌川たいじ『バケモンの涙』
主人公の橘トシ子は19歳。実家は大阪の郊外にある旧家(蔵が4つもある)で、トシ子は「いとはん」(=大店の長女)と呼ばれて育った。
2020.8.12 【今週はこれを読め! ミステリー編】絶体絶命から始まるスリラー〜フィン・ベル『死んだレモン』
人生をやり直す決意をした男が殺されかける。
2020.8.11 【今週はこれを読め! SF編】新たな壮途へ乗りだした年刊日本SF傑作選
創元SF文庫で十二年つづいた《年刊日本SF傑作選》を後継するアンソロジー・シリーズ。版元を移した経緯や、編者が大森望・日下三蔵のタッグチームから大森ソロへ変わったことなど「序」で語られているが、支障なく友好的に運んだようだ。まずは欣快。
2020.8.6 【今週はこれを読め! エンタメ編】幸せは一種類じゃない!〜桂望実『結婚させる家』
理想のあり方、というものがある。ある、というか、一般的にそれが理想だとみなされているテンプレートがある。その最たるものが、理想の家族像ではないだろうか。両親が揃っている、子どもはふたりくらい、できれば庭付きの一軒家、といったあたりが最も必要とされる条件に違いない。
2020.8.4 【今週はこれを読め! SF編】埋もれた名作を発掘・再評価する意欲的アンソロジー
昨夏に刊行された短篇集『なめらかな世界と、その敵』(本欄でも紹介)によって、一躍、現代日本SFの最先鋭へと躍りでた伴名練。小説家のみならず、「読み手」としても飛びぬけた資質の持ち主だ。それを遺憾なく証明したのが、この二冊組のアンソロジーである。
2020.7.31 【今週はこれを読め! ミステリー編】おそるべき規模の物語アルネ・ダール『時計仕掛けの歪んだ罠』
何も信用できなくなって世界が剣呑に見えてくる。
2020.7.29 【今週はこれを読め! エンタメ編】「普通」に縛られない家族の物語〜寺地はるな『水を縫う』
家族とは何か。仕事とは何か。新入社員&就活生の息子たちがいる今年の我が家において、常に心を占める問題となっている。どういう仕事をして生きて行きたいか。仕事をしていくうえでどんな心構えでやっていかなければならないか。難しいのは、自分の経験を踏まえて多少のアドバイスはできても、それが息子たちの心に響くとは限らないし、そもそも全方位的に効く忠告などないということだ。であれば、自分のやるべきことは最終的には自分の心に聞くしかない。息子たちも、私も。
2020.7.25 作家の読書道 第219回:今村翔吾さん
2017年に『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』を刊行してデビュー、翌年『童神』(刊行時に『童の神』と改題)が角川春樹小説賞を受賞し、それが山田風太郎賞や直木賞の候補になり、そして2020年は『八本目の槍』で吉川英治文学新人賞を受賞と、快進撃を続ける今村翔吾さん。新たな時代小説の書き手として注目される今村さんは、いつ時代小説に魅せられ、何を読んできたのか? 軽快な語り口調でたっぷり語ってくださいました。
2020.7.22 【今週はこれを読め! エンタメ編】鯨井あめ『晴れ、時々くらげを呼ぶ』にやられた!
やられた。完全にやられた。途中までは、高校生たちの無謀とも思えるクラゲ乞いに対して、一歩引いた感じでみていたのに。クラゲが降るとか降らないとか、SFっぽい設定だなあ。世界中に迷惑をかけたいといっても、「病院はてんてこ舞い」な状況を期待するのはいただけないけど(コロナで医療崩壊が危ぶまれるこの時期に)。そもそもなんでクラゲなんだろ。...といった具合に。でも、最後まで読んで、すべて納得できた。迷惑になってもいい。クラゲが降るまで呼べばいい。
2020.7.21 【今週はこれを読め! SF編】作者一流の書法と画像的想像力の横溢。さまざまな側面を示すショーケース。
酉島伝法の三冊目! 待望の短篇集だ。
2020.7.17 【今週はこれを読め! ミステリー編】テイラー・アダムズの壮絶スリラー『パーキングエリア』
地の果てで命のやりとりをする小説である。
2020.7.15 芥川賞に高山羽根子さんと遠野遥さん 直木賞に馳星周さん
第163回芥川賞と直木賞の選考会が15日開かれ、芥川賞は高山羽根子さんの「首里の馬」と遠野遥さんの「破局」の2つの作品が選ばれました。また、直木賞は馳星周さんの「少年と犬」が選ばれました。
2020.7.8 【今週はこれを読め! エンタメ編】甲子園を整備するプロの仕事〜朝倉宏景『あめつちのうた』
もともと激ユルだった私の涙腺は、加齢とともに衰弱の一途をたどっている。にしても、我ながらいくら何でも泣きすぎだろうと思ったのが、数年前高校野球をテレビで見ていた際にまっすぐに引かれたグラウンドの白線を見て涙ぐんでしまったことだ。「ああ、こんなに美しくグラウンド整備をすることで、選手たちを支えるスタッフがいらっしゃる...!」と感極まり、一緒に見ていた家族たちを震撼させた。いま思えば、あのときの私は阪神園芸さんの芸術的な仕事ぶりに胸を打たれていたのか...。
2020.7.1 【今週はこれを読め! エンタメ編】"エンターテインメント小説界の至宝"の家族小説〜遠田潤子『銀花の蔵』
「エンターテインメント小説界の至宝」は、私が独断で作家・遠田潤子のキャッチコピーとして使用しているフレーズである(遠田作品のレビューではこれからもどんどん使っていこうと思ってます)。
2020.6.30 【今週はこれを読め! ミステリー編】ろくでなし刑事たちが揃った『集結 P分署捜査班』開幕!
まるで辻真先脚本の第1話のような。
2020.6.27 作家の読書道 第218回:藤野可織さん
不穏な世界を時に美しい言葉で、時に奇想を炸裂させた設定で描き出す藤野可織さん。2013年には『爪と目』で芥川賞を受賞、最近では女性2人が破滅に向かう世界で活き活きと冒険する『ピエタとトランジ<完全版>』が評判に。この世界観を生み出す背景に、どんな読書遍歴があったのでしょう? 小説だけでなく、影響を受けた漫画や好きな映画や俳優についてもたっぷり教えてくださいました。
2020.6.26 遠藤周作の未発表小説「影に対して」発見 死去後初めて 長崎
江戸時代のキリシタン弾圧をテーマにした代表作「沈黙」で知られる作家、遠藤周作の未発表だった小説が長崎市で見つかりました。
2020.6.24 【今週はこれを読め! エンタメ編】読書嫌いと本の虫の青春ミステリー〜青谷真未『読書嫌いのための図書室案内』
読書家の登場人物が出てきたり、本にまつわる施設(書店・図書館・学校図書室など)が舞台となったりするような小説、たいていの読書好きの好みのどストライクだろう。本書は図書委員の高校生男子が主人公、同じクラスのもうひとりの委員は本の虫である女子、まさに舞台は整った状態。主人公が本が苦手、というのも何ら興を削ぐものではない。
2020.6.23 【今週はこれを読め! SF編】二重の有徴を背負った人生、呪われた天分、世界を護り/滅ぼす才能
《破壊された地球》三部作の開幕篇。待望の邦訳である。
2020.6.23 【今週はこれを読め! ミステリー編】追い詰められた者の小説『その手を離すのは、私』
逃亡者、あるいは追い詰められた者の小説というべき作品である。
2020.6.17 【今週はこれを読め! エンタメ編】最高の短篇作家の作品集〜イーディス・パールマン『蜜のように甘く』
「現存するアメリカ最高の短篇作家」(「ボストン・グローブ」紙)、「世界最高の短篇作家」(ロンドン・タイムズ」紙)といった絶賛は、本書の著者であるイーディス・パールマンのためのものである。
2020.6.16 【今週はこれを読め! SF編】機械論的な時間ループではなく、記憶と歴史の物語
これは、ひとりの女性の人生、第二次大戦を挟んだ激動の歴史、そして、なにより「記憶の物語」だ。外形的には時間ループSFとも言えるが、そう称されるおおよその小説が依拠している機械論的時間観とは一線を画す。
2020.6.10 【今週はこれを読め! エンタメ編】仕事と家族をめぐる短編集〜田中兆子『あとを継ぐひと』
仕事と家族。この春新社会人になったばかり&現在就活まっただ中な息子たちのいる身には、見逃せないキーワードだ。そうはいっても私などは「会社の方たちとうまくやっていけるのだろうか」「オンライン面接って対面以上に緊張しないだろうか」とハラハラする程度のことしかできないわけだが、本書に出てくる主人公たちの場合は互いにより緊張感のある状況に置かれている。
2020.6.10 【今週はこれを読め! ミステリー編】小説の暴力性を描く『念入りに殺された男』
暴力の小説であり、小説の暴力性についての物語でもある。
2020.6.9 文学賞の選考もリモートで…江戸川乱歩賞に佐野広実さん
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、文学賞の選考にも新たな方法が取られています。ミステリー小説の登竜門として知られる江戸川乱歩賞は、今回初めてテレビ会議システムで選考が行われ、佐野広実さんの『わたしが消える』が選ばれました。
2020.6.3 【今週はこれを読め! エンタメ編】料理をめぐる実力派作家のアンソロジー『注文の多い料理小説集』
新型コロナウィルス感染症拡大防止のため、このところ何か月にもわたって我々はさまざまな不自由を耐え忍んでいる。
2020.6.2 【今週はこれを読め! SF編】里程標的作品から現代の新鮮作まで、人狼テーマの饗宴
『幻想と怪奇』第2号は、特集「人狼伝説 変身と野生のフォークロア」。
2020.5.28 【今週はこれを読め! ミステリー編】人間の残酷さを浮かび上がらせる作品集『おれの眼を撃った男は死んだ』
シャネル・ベンツ『おれの眼を撃った男は死んだ』(東京創元社)には、優れた短篇に与えられるO・ヘンリー賞を2014年に獲得した「よくある西部の物語」を含む10の小説が収められている。知っている限りベンツが邦訳されるのはこれが初めてだ。テネシー州メンフィス在住で、ローズ・カレッジで教鞭を執っているという以外の経歴はわからない。
2020.5.27 【今週はこれを読め! エンタメ編】一冊の本をめぐるスパイ物語〜ラーラ・プレスコット『あの本は読まれているか』
私のスパイへの強い憧れについては当コーナーをずっと読んでくださっているみなさん(そんな奇特な方など存在するのだろうか)はご存じだと思うが、本書のスパイ活動にはとりわけ興味を引かれた。なぜならこれは、一冊の本をめぐる特殊作戦を描いた物語だったから。
2020.5.26 【今週はこれを読め! SF編】7分間のお楽しみ。いずれ劣らぬ十一篇。
昨夏に刊行された『5分間SF』につづく、草上仁の短篇集。〈SFマガジン〉に1991年から2006年にかけて発表された十篇に、書き下ろしの一篇を加えた一冊だ。
2020.5.20 【今週はこれを読め! エンタメ編】農業にまつわる8つの物語〜瀧羽麻子『女神のサラダ』
私の父方の祖父母は現代においてはめっきり少なくなった専業農家だったのだが、本書を読んで自分が農業について全然わかっていないということがわかった。毎日食べるものを作ってもらっているというのに。まして生産者の方々の気持ちなど、なおさら理解できていなかった。
2020.5.14 【今週はこれを読め! ミステリー編】すべてを描く作家のノワール『コックファイター』
あらゆる中毒者のために。
2020.5.13 【今週はこれを読め! エンタメ編】素敵シニアライフに隠された秘密〜井上荒野『よその島』
この小説に関しては、若い人と年配の人とではかなり感想が違ってくるのではないかと思う。若者にとっては、本書で描かれる老いというものがまだまだ対岸の火事のようにしか感じられないケースが多いだろう(高齢の家族が身近に存在するような場合は、また別だと思うが)。一方、老化現象進行中な私のような者にとっては、そろそろ他人事とは思えないシチュエーションの連続だった(主人公のひとり、碇谷芳朗が不動産屋の店員に「ご高齢のかた」と呼ばれてびっくりする場面が印象的)。
2020.5.12 【今週はこれを読め! SF編】奇妙な全体主義の成立と凋落、孤独と想像力をめぐって
ケイト・ウィルヘルムの代表長篇。単行本刊行の翌年(1977年)にはヒューゴー賞とローカス賞を受賞している。1982年にサンリオSF文庫から邦訳が出たものの、ほどなく絶版。若い読者にとっては「名のみ聞く名作」となっていたので、こんかいの復刊は好企画だ。
2020.5.5 【今週はこれを読め! SF編】ヤング・カーティス・ニュートン、青二才からヒーローへ
人気スペースオペラ《キャプテン・フューチャー》のリブート版。月面チコ・クレーターの秘密基地から出動する知恵と力と勇気のヒーロー、キャプテン・フューチャーことカーティス・ニュートンと、彼につきそうフューチャーメンという構図は元どおりだが、細かい設定が現代風にアレンジされている。たとえば、宇宙開発の歴史がアポロ宇宙船の月着陸の延長線上にあり、太陽系諸惑星への植民はテラフォーミングと人間のゲノム改造によって成されたといった具合だ。ちなみに元シリーズでは各惑星にネイティヴの知的種族が存在していた。
2020.5.2 【今週はこれを読め! ミステリー編】孤独な少女の生きる姿を描く『ザリガニの鳴くところ』
かけがえのない自分という存在を、どうぞ大事に。
2020.4.28 【今週はこれを読め! SF編】一面に凍てついた世界を、ふたりで南へ。
投稿サイト発の『横浜駅SF』で日本SF大賞の候補になった著者の第一短篇集。六篇を収録している。
2020.4.25 作家の読書道 第217回:乗代雄介さん
2015年に「十七八より」で群像新人文学賞を受賞して作家デビュー、2018年に『本物の読書家』で野間文芸新人賞を受賞、今年は「最高の任務」で芥川賞にノミネートされ注目度が高まる乗代雄介さん。たくさんの実在の書物の題名や引用、エピソードが読み込まれる作風から、相当な読書家であるとうかがえる乗代さん、はたしてその読書遍歴は?
2020.4.23 【今週はこれを読め! ミステリー編】颯爽と八方破れな『弁護士ダニエル・ローリンズ』登場!
人生に絶望するにはまだ早い、と教えてくれる小説である。
2020.4.22 【今週はこれを読め! エンタメ編】変わってゆく主婦・絵理子がまぶしい〜窪美澄『たおやかに輪をえがいて』
主人公の絵里子は私と同じ52歳。以前はそんなに気にしたことはなかったのに、最近本を読んでいて登場人物が自分と同年代だとそのことについて強く意識するようになった。
2020.4.21 【今週はこれを読め! SF編】激しい性のカタチ、遙かな愛のスガタ
性を題材にした5作品を収録したSF短篇集。
2020.4.14 【今週はこれを読め! SF編】ふたつの偽史が結ぶ真実の因果
日本ファンタジーノベル大賞2019受賞作。古代中国を思わせる世界「伍州」を舞台とした伝奇ファンタジイだが、テキストの構成に再帰的な企みがあり、なおかつ超弩級スペクタクルのSF的アイデアが投入される。じつに読みどころの多い作品である。ヒロイン「瑤花」の飄然としたキャラクターも魅力的だ。
2020.4.9 【今週はこれを読め! ミステリー編】『短編ミステリの二百年vol.2』で評論と短編を楽しむ!
コロナ禍に遭われたみなさまにお見舞い申し上げます。また、緊急事態宣言発令で外出自粛を余儀なくされているみなさまにも。ざわざわとして心落ち着かない日々ですね。早く日常が取り戻せないものかと思います。
2020.4.8 【今週はこれを読め! エンタメ編】70歳差のかけがえのない友情物語〜アリ・スミス『秋』
EUを離脱するしないの国民投票でイギリスが大騒ぎになっていたのは、もう4年も前のことなのか。
2020.4.4 C・W・ニコルさん死去 環境保護活動家で作家、79歳
環境保護活動で知られる作家のC・W・ニコルさんが3日、直腸がんのため長野市の病院で死去した。79歳だった。葬儀は親族のみで営んだ。喪主は妻真理子さん。後日、お別れの会を開く予定。
2020.4.1 【今週はこれを読め! エンタメ編】朝井リョウのタイアップ&コラボ短編集『発注いただきました!』
以前ある作家が「小説やエッセイを書くのは完全にお金のため」という趣旨の文章を書いておられるのを読んで(うろ覚えだが、概ねこういう内容だった)、衝撃を受けたことがある。作家というものは、"たとえお金にならなくても書くのをやめられない"人がなるものだと思っていたからだ。しかしながら、これは私が読者としてナイーブすぎた。それで生計を立てている以上、書くことと収入とは切っても切り離せない。そしてまた、依頼主からの注文があれば、書き手はその希望に沿って書くこともまた必要になってくるわけだ。
2020.3.27 2020年5月6日(水祝)「第三十回文学フリマ東京」開催中止のお知らせ
5月6日に開催を予定していた「第三十回文学フリマ東京」は、中止といたします。
2020.3.24 【今週はこれを読め! SF編】ケン・リュウ編の中国アンソロジー第二弾!
『折りたたみ北京』に続く、現代中国SFを紹介するアンソロジー。編者ケン・リュウは「序文」で、こう告げる。
2020.3.18 【今週はこれを読め! エンタメ編】ド直球の家族小説短編集〜木村椅子『ウミガメみたいに飛んでみな』
「そもそもウミガメって飛べるんだっけ?」なんて野暮なことは言いっこなしだ。ウミガメだって人間だって、空くらいなら飛べるのである。固定観念は捨てるべきだ。
2020.3.17 【今週はこれを読め! SF編】〈暦法〉宇宙国家への異端の侵攻。めくるめく展開のスペースオペラ。
エキゾチックな設定のもとで展開されるモダン・スペースオペラ。原書は2016年に刊行され、ローカス賞第一長篇部門を受賞している。
2020.3.13 第11回〈小説 野性時代 新人賞〉 選考結果のお知らせ
3月13日(金)午後4時より、第11回〈小説 野性時代 新人賞〉の選考会が行われました。応募総数440作品の中から最終選考に残った4作品のうち、選考委員の厳正なる審査により、蝉谷魚ト(せみたに・とと)さんの『化け者心中』が大賞に決まりました。蝉谷さん、おめでとうございます!
2020.3.10 【今週はこれを読め! SF編】浪漫の帝都と大陸の新興都市が舞台、波瀾のスチームパンク
和製スチームパンクの第三作。設定は第一作、第二作からつづいているが、物語としては独立しているので、この巻だけ読んでも支障はない。ただし細かいくすぐり----たとえばヒロインの伊武(イヴ)が長須鯨の描かれた箱を大切にしていて、誰かが腰掛けようとすると「椅子じゃない」と怒るくだりなど----は、シリーズを追いかけているファンへのサービスだ。そのあたりも含め、大森望さんが「解説」でシリーズ全体の概要をまとめてくれている。本書から読む場合は、まず「解説」からどうぞ。
2020.3.4 【今週はこれを読め! エンタメ編】亡くなった母から届いたノート〜小手鞠るい『窓』
本書では、ウガンダの内情をはじめとした海外の複数の国における問題について、多くの紙幅が割かれている。楽しい話題とはかけ離れた要素を含むこの作品を、エンタメ小説として本欄で紹介していいものかどうか迷った。しかし、『窓』はノンフィクションでもルポルタージュでもない。ここで取り上げなければ、レビューなどがアップされる場が限られてしまうのではないかと思い(自分のTwitterという手もなくはないけど、零細アカウントなので...)、やはりご紹介させていただくことにした。
2020.2.26 【今週はこれを読め! エンタメ編】戦争体験を語り継ぐ〜古内一絵『鐘を鳴らす子供たち』
昭和42年生まれの私は、子どもの頃「戦争を知らない子供たち」という歌をよく耳にした。人口全体の割合としては、まだ戦後生まれが珍しかった時代かと思う。現代の日本においては、いかに高齢者社会が進んだとはいえ、戦争を知る世代の人々はもはや圧倒的少数派に違いない。「戦争を知らない子供たち」が当たり前になった社会は、平和のありがたみが実感されにくい社会でもある。
2020.2.25 【今週はこれを読め! SF編】福島、イラク、新疆ウイグル自治区......核をめぐる因縁が東京で交叉する
ワン・モア・ヌーク(核をもう一度)。
2020.2.22 作家の読書道 第215回:相沢沙呼さん
『medium 霊媒探偵城塚翡翠』が2019年末発表のミステリランキングで3冠を達成、今年は同作が2020年本屋大賞ノミネート、第41回吉川英治文学新人賞候補となり、さらに『小説の神様』(講談社タイガ)が映画化されるなど、話題を集める相沢沙呼さん。そんな相沢さんが高校生の時に読んで「自分も作家になりたい」と思った作品とは? 小説以外で影響を受けたものは? ペンネームの由来に至るまで、読書とその周辺をたっぷりおうかがいしました。
2020.2.18 【今週はこれを読め! SF編】「珍しさ」より「質」を重視した、選りすぐりの十篇。
過去十年に発表された日本SFの傑作選。『2』は「新鋭篇」で、採られているのは次の10篇。
2020.2.12 【今週はこれを読め! エンタメ編】ツンデレ皇子と猫の活躍譚〜渡辺仙州『天邪鬼な皇子と唐の黒猫』
全国のネコ部ならびにツンデレ好きのみなさん、我々の大好物が小説という形をとって現れましたよ! 中国の王朝が唐であった時代、蘇州に1匹の黒猫がいた。物心ついた頃から親兄弟はおらず、ずっとひとりで生きてきたという。自らを「頭がよくてケンカも強い」と称する彼は、「体も大きくなく、どちらかといえば力も体力もない。それでも負けたことがないのは、たたかい方をうまれつき理解していたからだ」と語る。そう、かの黒猫は「兵法」を知り、さらには人語を理解する猫だったのだ。
2020.2.10 【今週はこれを読め! ミステリー編】染み入るような警察小説『カタリーナ・コード』
染み入るような、という表現はこういう小説のために使うべきなのだろう。
2020.2.9 夏目漱石の小説 12作品の自筆原稿が所在不明「文化遺産が…」
文豪 夏目漱石が書いた代表的な小説のうち半数にあたる12作品について、自筆原稿の所在が確認できなくなっていることが分かりました。調査を行った専門家は、自筆原稿は作品の成立過程をたどる貴重な資料だとして「かけがえのないものであり、大切に受け継いでいくことが必要だ」と指摘しています。
2020.2.5 【今週はこれを読め! エンタメ編】明るく前向きな気持ちになれる連作短編集〜凪良ゆう『わたしの美しい庭』
現在最も書店員から熱く支持される作家のひとりである凪良ゆうの新作。...というのが誇張でもなんでもないことを、私は先日実感した。
2020.2.4 【今週はこれを読め! SF編】ハイテク廃棄物のディストピア、最周縁から世界を批判する哀しきモンスター
現代中国SFの話題作。サイバーパンクの系譜を引く近未来ディストピアを、アクション・ノワールの味わいに仕上げている。さながらパオロ・バチガルピの好敵手といったところだ。
2020.2.3 【今週はこれを読め! ミステリー編】日常が断絶し、不安が形をとる短編集〜ブッツァーティ『怪物』
世界が抱えている根源的な不安を形にするとディーノ・ブッツァーティの小説になる。
2020.1.29 【今週はこれを読め! エンタメ編】将棋盤を挟んだ少女と元棋士の対話〜尾﨑英子『竜になれ、馬になれ』
これを題材にした本(漫画、映画、などなど)はスルーできない、というポイントは人それぞれであろう。私の場合は、「駅伝」と「将棋」。シーズンがだいたい秋〜冬場と決まっている駅伝と違って、将棋は一年中何かしらのタイトル戦やその予選・決勝リーグ的なものが途切れることなく行われている。大一番というときでなくても常にトレーニングや鍛錬を続けているのは同じだろうし、駅伝のように時期が集中していれば楽だなどとは決して思っていないが、成績が上位のプロ棋士ほど年間を通していくつものリーグ戦を同時進行で戦わなければならないとなると将棋ってほんとに過酷な世界だなと圧倒される。
2020.1.28 【今週はこれを読め! SF編】悲しげな歌を歌う怪獣、全体主義に抗う《人間》
原著は1965年刊。邦訳は、まず67年に大光社《ソビエトS・F選集》の一冊として『怪獣17P』の題名で刊行、78年にはサンリオSF文庫で原題に即した『旅に出る時ほほえみを』として再刊、そして歳月を経たいま、こうして白水Uブックス《海外小説 永遠の本棚》に収められた。つごう三回、それぞれ傾向の異なるレーベルで、それぞれの読者層へと届けられたわけだ。それだけの力を持った名作である。
2020.1.25 【今週はこれを読め! ミステリー編】〈ミレニアム〉シリーズ、堂々完結!
『ミレニアム6 死すべき女』はダヴィド・ラーゲルクランツによる新〈ミレニアム〉三部作の最終章にあたる作品だ。ご存じのとおり〈ミレニアム〉三部作の著者はスウェーデン生まれの作家スティーグ・ラーソンだが、彼は作品を書き上げたあとの2004年に亡くなってしまった。2005年に刊行が始まると過去に例がないほどの売り上げを記録し、全世界で翻訳されてベストセラーとなった。ドイツなどの近隣諸国にまで影響を与え、文字通り北欧ミステリーを変えた里程標的作品となったのである。
2020.1.25 作家の読書道 第214回:凪良ゆうさん
引き離された男女のその後の時間を丁寧に描く『流浪の月』が大評判の凪良ゆうさん。もともとボーイズラブ小説で人気を博し、『神さまのビオトープ』で広い読者を獲得、新作『わたしの美しい庭』も好評と、いま一番勢いのある彼女ですが、幼い頃は漫画家志望だったのだとか。好きだった作品は、そして小説を書くようになった経緯とは。率直に語ってくださっています。
2020.1.23 【今週はこれを読め! エンタメ編】ジョージ・ソーンダーズ『十二月の十日』に泣く!
嘘でしょ? このジョージ・ソーンダーズって、あの『短くて恐ろしいフィルの時代』(角川書店)を書いた人のはず。刊行されて間もなく読んだけれど、その当時断トツにけったいな本だと思った。なのに、短編集である本書の最後に置かれた表題作「十二月の十日」、泣けて泣けてしょうがなかったじゃないの! こんな小説を書くような作家だったっけ?
2020.1.21 【今週はこれを読め! SF編】波瀾万丈な人生のなかにの潜む"得体の知れぬ"裂け目
メキシコ出張中、急な雨を避けるために飛びこんだ古本屋。ほとんどはスペイン語の安手のペーパーバックだったが、棚の下のほうにハードカバーが何冊かある。私の目を引いたのは、とくに大判の一冊だ。英語のようだが、背文字は色褪せていてよくわからない。黴の匂いのするページを開くと、扉に『黒曜石雲』とあった。十九世紀の本のようだ。著者はRev. K. Macbaneとある。「Rev.」ということは牧師(reverend)か? 私がその本に運命的なものを感じたのは、副題に「エアシャー郡ダンケアン町の上空で起きた今も記録に残る奇怪なできごとの記述」とあったからだ。
2020.1.15 芥川賞に古川さん「背高泡立草」 直木賞に川越さん「熱源」
第162回芥川賞と直木賞の選考会が東京で開かれ、芥川賞は古川真人さんの「背高泡立草」、直木賞は川越宗一さんの「熱源」が、それぞれ選ばれました。
2020.1.15 【今週はこれを読め! エンタメ編】想像のななめ上を行く展開にびっくり〜町田そのこ『うつくしが丘の不幸の家』
『うつくしが丘の不幸の家』。果たしてどのような物語だろうか。「うつくしが丘」という地名は素敵な感じ、しかしより注目すべきは「不幸の家」というキーワードだろう→「不幸」というからには不幸なのだろう。...ということで、私が想像したのはイヤミスだった。
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