夢枕 獏|ゆめまくら ばく|本名:米山 峰夫 - は、日本の小説家・随筆家・写真家・漫画原作者。日本SF作家クラブ会長(1994年 - 1995年)。
小説のジャンルは伝奇・歴史小説、格闘小説、SF小説、山岳小説など幅広い。
神奈川県小田原市生まれ。神奈川県立山北高等学校、東海大学文学部日本文学科卒業。
10歳から小説家を志し、大学卒業後は編集者をしながら作家活動と考えていたが、就職に失敗してしまい山小屋で働く。ペンネームの由来は、夢を食べるとされる伝説上の生物「獏」と、夢のような話を書きたいという意味がある。
筒井康隆が主宰する同人誌『ネオ・ヌル』にタイポグラフィ作品『カエルの死』を発表し、同品が『奇想天外』8月号に転載され作家デビュー。また、小説でのデビューは同じ『奇想天外』同年10月号に掲載された短編『巨人伝』(後に『遥かなる巨神』と改題)。これは同人誌『宇宙塵』に紹介されたが、当初、柴野拓美は作品の本質を掴めず、自宅から近かったこともあり直接説明を受けて納得して『宇宙塵』に掲載したという経緯がある。処女長編作品は1981年に双葉社から刊行された『幻獣変化』(『涅槃の王』シリーズの1作目)。
作品については本人曰く、「エロスとバイオレンスとオカルトの作家」で、密教的要素を散りばめたエログロの伝奇バイオレンスや、ひたすら男たちが肉弾戦を演じる本格格闘小説を得意とする。しかしながら商業デビュー直後はそのような得意ジャンル一本槍では無く、集英社コバルト文庫他で少女向け小説やジュブナイル小説なども執筆した。デビュー短編集『猫弾きのオルオラネ』は、現在の作風とは大きく異なる、詩情とユーモアをたたえた大人の童話風の一冊である。
1984年に祥伝社から刊行された『魔獣狩り』(『サイコダイバー』シリーズ)で一躍ベストセラー作家になり、1作目の淫楽編の印税で建てた豪邸は「淫楽御殿」と呼ばれる。
著者の代表作の一つである安倍晴明を主役とした『陰陽師』シリーズは晴明ブームのきっかけにもなった。また、メディアミックス展開としては2001年に野村萬斎を主演に東宝に公開された実写映画は大ヒットし、岡野玲子が作画を担当した漫画版は第5回手塚治虫文化賞マンガ大賞と第37回星雲賞コミック部門を受賞している。
著作が後世の創作に与えた影響も大きく『刃牙』シリーズで有名な漫画家の板垣恵介はその影響を受けている一人であり、『餓狼伝』の一読者であったとも公言している板垣自身は後に『餓狼伝』のコミカライズと、またその縁をもって『獅子の門』の表紙及び挿絵も手掛けている。
実力派の漫画家によってコミカライズされた数は少なくなく、上述した岡野玲子(『陰陽師』)と板垣恵介(『餓狼伝』)の他に、谷口ジローによって『餓狼伝』と『神々の山嶺』が、伊藤勢によって『荒野に獣慟哭す』と『瀧夜叉姫』(『陰陽師』シリーズの長編作品)が漫画化されている。本人も大の漫画好きで過去にはテレビ番組『BSマンガ夜話』の準レギュラーでもあった。
旅行や釣りが趣味で、ヒマラヤ登山や、玄奘三蔵の歩んだ道を追体験するルート、アラスカの原野紀行などのハードな冒険にも挑んでおり、南米ペルーのアマゾン川源流域に釣行した折には、現地ガイドに勧められてピラニアを生食してしまい、顎口虫(寄生虫)に感染したのではないかと現在でも心配・後悔している。釣りに関しては、「川の学校」で講師を務める等造詣も深く、中でも鮎釣りに熱中しておりチンチン釣り(餌釣り)を得意としていて、解禁日ともなると執筆意欲が削がれるほど鮎に焦がれてしまうほどであり、ヒマラヤ登山を題材にした『神々の山嶺』の様に、釣りを題材にした『鮎師』や『大江戸釣客伝』といった長編作品も発表している。『上弦の月を喰べる獅子』他、オウムガイなどに代表される「螺旋」をモチーフにした作品も多く発表している。
本人は格闘技経験は無いものの、昔から熱心なプロレス・格闘技ファンでもあり、多くの格闘小説を手掛ける中で長編格闘小説『空手道ビジネスマンクラス練馬支部』の執筆の際には、格闘技経験のない中年男性が武道に出会い、体験する様をリアルに描写するためにモデルとなった大道塾(東孝塾長)に一日入門し、倒れるまで稽古に参加した。プロレス業界では「関節技の鬼」の異名をとる藤原喜明に実際に数十の関節技をかけてもらうなど(本人いわく「自殺志願者でもあの痛みからは逃れようとするだろう(大意)」)、リアリズムの追求のための体当たりな取材で格闘技ファンの間に人気が高く、格闘技関係の評論やエッセイも多い。また、K-1の提唱者のうちの一人でもある。
多作ではあるが、そのため複数作品を平行で連載するのが常で、10作以上の作品を掛け持ちしながらの連載もまた珍しくなく、『キマイラ』や『餓狼伝』と言った連載開始から30年以上を経てなお未だに完結していない長編小説もあるが、これは書き進めていく中で構想がどんどん膨らんで連載が長期化する為でもある。また、雑誌側の都合で執筆中断を余儀なくされてしまった作品も幾つか存在する。頭の中にある作品構想は尽きる事なく膨大で、本人は「残りの人生のうちに脳内にある全ての作品を書き上げる事が出来るか分からない」といった内容の発言を漏らしている。
ファン想いな面も強く、若いファンの過失を自らには過失が無いにもかかわらず共に頭を下げたり、ファンの不幸に関しては見舞いや葬儀への参列も苦としないなど、人格者と慕われている。
別名義でも小説作品を発表している。また、俳句の投稿も別名義で行っていることが公表されている。
2018年春の褒章で紫綬褒章受章。同年3月25日の『朝日新聞』朝刊にて、自費で全面広告「夢枕獏の変態的長編愛」を展開して話題になる。
2020年4月13日、新型コロナウイルスの国内流行を受け、「静かに、しかし強く、なお強くこみあげてくるもの」と題した短文を発表。
年に一度受けている人間ドックで2020年11月に縦隔のリンパ節に腫れがあると指摘され、精密検査で翌年3月に悪性リンパ腫と診断され、連載を減らして闘病した体験を『読売新聞』夕刊の土曜日付コラムで2024年12月に公表した。
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